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錆びる包丁の悩み

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 少しずつ秋の気配を感じつつもありがたいことにお仕事のご依頼で汗をかく日々です。 今回のお悩みは錆びる包丁です。 上下の二本が錆びております。 薄刃包丁と柳葉包丁ですね。サビは非常に深くサビ取りをしても取り切れないほどの深さに達しています…… そうするとどうなるか、研いでも刃こぼれになってしまいます。 大抵の研ぎ屋は裏を研ぐのに抵抗がある人が多いと思われます。 合わせで作られている場合は裏に硬い鋼が鍛接されており、研いで切れ味を出すのはこの硬い鋼の部分になります。 そして厄介なことに画像の一番上の薄刃包丁の裏側先端部分にとんでもなく深いサビが… しばらく研いでいて怪しいとは思いましたが、先端の黒い部分がボロっと取れました… 作業中でしたが普通に悲鳴を上げました。 この薄刃、とんでもなく硬く作られており0.3ミリほど削る間に普通の包丁が3本以上仕上げられるぐらい削れない包丁でした。 ぼやいても刃物は削れません。こうなったら機械研磨でいくしかなく泣く泣く機械作業へ… が、しかし機械研磨でもビクともしません。 こうなったら赤字覚悟の手作業です。 お客さんには納期はかなり余裕をもって預かっていましたがこれ一本で荒砥石と腰の耐久力がゴリゴリ削れました。 値段に反映するか非常に悩みましたが、サビと欠け取りだけの追加料金だけとなります。 見積りは大まかにしかできません。 見抜く能力不足と言われればそれまでですが、実際は研ぐまでその包丁のことはわかりません。 お客さんからすれば砥石の質や減り具合なんてのは知ったことではないのです。 研ぎ上がった結果のみがお客さんには伝わります。 だからこそ少しずつ使う砥石や切れ味の仕上がりの調整などを日ごろから行っております。 そして研ぎ上がったのはコチラ そろそろ鎬を一定の曇り具合にしたいのですが、中々上手くいきません… 何とか綺麗に短時間で仕上げる術があれば導入したいですね。 以下は脱線のお話 お客さんの中には無自覚で調理の技術や頻度が高く、包丁のグレードが追い付いていない人もいます。 切れなくなるのが早いのは自分の腕のせいではないかと仰るお客さんがいました。 実際は調理が得意で苦にならない人が複数の品を一本の包丁で行っているという現代では珍しいお客さんだったりします。 その場合は買い替えではなく使う包丁を1本増やしてみてはどうかと打診...

研ぎ器でのメンテと注意事項

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 少し間が空きましたが更新を忘れていたわけではございません。 最近バタバタしておりましてひと段落したので更新です。 タイトルのとおり研ぎ器のお話でございます。 研ぎ屋さんは結構目の敵にしていると思われますが、実際好かれてはいません。 やむを得ない事情で使う方はいらっしゃると思いますが、砥石を持っていれば使う道具ではありませんので自分も使ってはいません。 じゃあ何が良くて何がダメなのか… メリット ・手早くメンテナンスができる。 ・ホームセンターなどで安価で入手できる。 ・スペースを取らない。 などなど。 最近では電動研ぎ器なんて物もございます。 家庭用コンセントでガリガリやってくれるやつですね。 続きましてデメリットです。山ほどありますが軽く紹介します。 デメリット ・刃先がめちゃくちゃ荒く仕上がる。 ・素早く仕上げるがゆえ鈍角になる。 ・刃線が真っすぐにならない。 ・切れ味が回復せず必死にガリガリして持ち込まれるころには刃先はガタガタに。 ・パフォーマンスがてらガリガリやったあと洗わずに食材を切る料理人がいる。 個人的にはデメリットが多いですが、それは砥石を使う人間の目線だと言われればそれまでですが、デメリットの最後のが一番気に入らないところではあります。 せめて拭うぐらいはしてほしいですね… パっと見は変わりませんが拡大してみましょう。 左が研ぎ器、右が砥石での研がれたものです。 左の方が切刃の幅が狭いですね。 砥石でメンテナンスした場合は右の包丁ぐらい切刃があるものです。 こうなるとガッツリ荒砥を当ててあげなくては軽やかな切れ味が出ません。 とんでもない鈍角なので荒砥を使ってもすぐカエリが出ません。 が、お仕事ですのでしっかりと当てていきます。 新品の包丁も左側の包丁のように鈍角に刃がついています。 刃こぼれ防止のためだと言われています。 無茶な使い方をされて刃こぼれしたらクレームになりますからメーカーが鈍角に研いでしまうわけです。 研ぎを生業としている人や研ぐのが趣味の人は新品の刃物はこういうものだとわかっているので開封後に研ぐことが多いようです。 同業者の人は包丁を購入した直後に開封もせずに持ち込まれたという面白い経験をしているようです。 硬い物を切らないで下さいと注意書きにも書かれていますが具体的には何が硬いのか。 それも書いていこうと思います。...